32人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふざけるな!!!!」
固めた拳が真直ぐに須藤の頬にめり込んだ。
ずざざざざっと音を立てて転がる須藤を荒い息を吐きながら眺める。
「はい、出来ました」
イケメンが場違いに明るい声を出した。
「交換が出来ました、憎悪も立派な気持ちですよ」
そう言って微笑むと、
では行きましょうかと、手を差し伸べた。
憎悪も気持ち。そうか。そうなのか。だったら仕方ない。
自分の気持ちを抑えられなかったのだ、あと少しだという、お互いを思う気持ちに手を貸してしまった。結局この男に負けたのだと諦め、死神に手を差し出した。
しかし、その手はすっと避けられた。
死神が取ったのは須藤の手だった。
はっとして振り返る。
須藤が笑ってる。
「だましてごめん、でも良かった、間に合った~」
心底安心した顔でそう言った。
「風の噂で、大が一人で困ってるって聞いたんだ。助けに行きたいけど、会わす顔が無い、だけど、意を決してやって来たあの日、この人と鉢合わせ。
死神だって言うじゃねえか。そんなことがあるかってんだ。なんで大が?じゃあ俺にしてくれって頼んだんだ」
鼻を啜ると、また、間に合って良かったと呟いた。
「大、ごめんな、本当にごめん。ごめんしか言えないな、大切な母さんを馬鹿女って言ってごめん、ごめんな、ごめん・・・・・・馬鹿は俺の方だ・・・・・・」
最初のコメントを投稿しよう!