冷蔵庫(へっつい幽霊)

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 あの日の夕方、俺がゲームをしていると、キッチンから声がした。 「わっ!醤油がもう少ししかない!ちょっと買ってくるね、ついでに何かいるものある?」 「え?今から?もう暗くなってんじゃん、醤油なんていいよ」 「すぐそこのコンビニだから」 「じゃ俺も行く」  のそのそと近づく俺をまた元のリビングに押しやって 「大丈夫だって、たまの休みなんだからゆっくりしてなよ」 そう言ってくれた。 「ちょっと行ってくるね」 「じゃ気をつけてよ」 「はーい」 いつものとびきりの笑顔でそう言って出て行ったきりタカコは戻って来なかった。 キー!ガシャン!!!という大きな音に飛び出してからは記憶が曖昧だ。 何故もっと強く止めなかったのか… 何故一緒に行かなかったのか… せめて玄関まで見送っていれば何秒かずれていたんじゃないのか… その思いだけがぐるぐる回り続けていた。 そしてそれは今もまだ続いている。  タカコに会いたかった。タカコがいなくなってから夢に出て来てくれる事を毎日願って眠りについた。なのに一度として現れてくれなかった。  それが今目の前でいつもの笑顔で、いつもの調子で、俺に話しかけている。 「夢みたいだ、あれ?夢見てるのかな?夢でもいいか」 テンションがおかしくなっているのか心の声がダダ漏れだったようで、タカコが返事をしてくれた。 「夢じゃないよ、私、あそこから出て来たの」 タカコの指差す先に、あの冷蔵庫があった。
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