冷蔵庫(へっつい幽霊)

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 タカコが言うには、やっぱりあの冷蔵庫のせいというか、おかげらしい。暗い中をひたすら歩き続けていた。怖くもないし、辛くもない。考えるのは残してきてしまった俺の事。心配で心配でたまらなかったけれど戻るわけにもいかない。そんな時目の前に分岐ができたと言う。  コウくんに会える気がしてとタカコが言った。えいやっとそちらの道を選び歩いて歩いてたどり着いたのが冷蔵庫だったらしい。 「びっくりしたよ!出てきたあと、ドア閉めようと振り向いたらまさかの冷蔵庫のドアだなんて〜」 タカコの、のびやかな笑い声に胸が詰まる。 「いつまでいられるの?」 遠恋中、長い休みの度泊まりに来てくれたタカコに最初の日に必ず聞いていた言葉が我知らず口から漏れた。 「久しぶりに聞かれた〜」 「久しぶりに聞いた〜」 2人で笑い合う。 「1週間だよ」 タカコがそう告げた。 そうか1週間か。 「よしよし、明日は会社に行くけどそれからはずっと一緒にいるから」 「仕事、行きなよ…」 タカコが口を尖らせる。 嬉しいくせに強がるときの癖だ。 「有給休暇腐るほどあるから、それに今取りやすいから」 悪戯っ子のように笑うとタカコは 悲しそうにまたごめんねと謝った。 「違う違う!そう言う意味じゃない、可愛そうだからじゃなくて、今は有給出来るだけ取れ取れって言われるから」 「働き方改革?」 「そうそれ!」 あー今普通の会話だなぁ。 目を閉じて胸に手を当ててしみじみ普通って幸せだなぁと感じていると、 タカコが拍手しはじめた。 「え?何?」 驚いて目を開けると 「え?コウくん、今から何か歌うのかと思って、違うの?」
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