みんな持ってる魔法の手

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「なに?パン屋のおばちゃんが  音大は可笑しい?私も生まれた  ときからここでパンを焼いてる  わけやないよ、フフフ」 「地元吹奏楽団で演奏もまだ  してはるんやで」 お母さんは二人の前に コーヒーを置いた。 「かのちゃん、お母さんは  東京でおった時分はバリバリの  キャリアガールやったんやで」 「キャリアガール?」 「おいおい、かのちゃん、  キョトンとしとるやないか。  “キャリアガール” なんか  今時やないぞ、ハハハ」 お父さん、お母さんの言う ”キャリアガール“ って・・・ 「證券会社で男なんかなぎ倒して  成績成績で走り回ってたわ」 恐い人かな・・・。 「パパもね、あんなTシャツ一枚の  “オッチャン” でもなくてね、  丸ノ内の商社マンやった」 「信じられへん・・・ 」 「この地元では・・・勉強出来るって  高校から東京の国立大学へ、  行ったらビックリ、全国から  秀才揃いでしょ?焦った焦った!」 しのちゃんは照れ笑いで続ける。 「パパも同じ・・・大学で知り合った  私達は就職してからもお互いに  励まし合って、すぐに結婚したのは  寂しかったのもあるなあ・・・  なんかいっつも競争して生活、  お金も・・・ここより儲かるけど  ここよりかかるしね・・・。  『ああもう疲れた』がお互いに  口癖になってた時にかのちゃんが  出来たのが判って・・・  パパに言うたら・・・  『もう帰ろ❗東京止めよ❗』って」    
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