みんな持ってる魔法の手

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「しのちゃん、ここやったんや。  今、店へ行ったら留守で」 「中西のおばあちゃん、ごめんね、  なにか用事かなあ?」 「境さんとこが、身内だけで法事、  簡単に二十人ほどの弁当が要るて  言うから “ロダン” 弁当をと、  言うてきたんや」 「うわあ、ありがとうございます」 「今、行けるなら一緒に境さんとこ、  打ち合わせにいく?」 「お願いします」 バタバタとしのちゃんは 中西のおばあちゃんと行ってしもた。 「忙しいなあ、しのちゃんは」 「ほんまやね、マメゾーさん。  ノンビリしてるの、見たことない。  でも、お母さん、楽しそうやろ?  かのちゃん」 「うん・・・」 「損ばかり・・・子供の眼には  そんな風に映るのかあ・・・  ウチの店も確かに  “70歳以上の方はコーヒー半額”  とか、してるけど」 「ウチもお年寄りの前髪カットは  300円にしてるけど」 「お客さんがお客さんを呼んで  繋がっていくのが商売、  同じところに生きるってこと、  ねえ、並河さん」 僕はお母さんと頷いた・・・。 なんの力も無さそうな人 ばっかりに見える町やけど みんな、みんな・・・ 魔法使いみたいな手、してる。 「こんにちは!」 ほらね、はぐれそうになった 僕の兄ちゃんも毎日元気! 「エデン・・・」 かのちゃんは僕を抱いてくれて 久しぶりに笑った。          - 第3話 了 -  
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