「そして、僕らは恋に落ちた」

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「鈴ちゃん、知ってるの?  三葉ちゃんを?」 そう言いながら入ってきたのは 天風堂のアンちゃんにじぃちゃん。 「私らも入れてもらうわあ」 僕のお母さんも梅本先生の 奥さんもやって来た。 「名古屋で顧問してる会社  『菓子匠・はるなみ』で  三葉さんは去年まで働いて  はったんですよ」 「ほう!老舗の菓子屋やな、  そりゃ、エエ餡を作るはずや❗」 天風堂のじぃちゃんが 感心するくらいのお店なんや。 「社長に依頼されて・・・  この半月ほど、探してたんです」 「社長が・・・?!」 三葉姉ちゃんはビックリ顔のあと、 ポロポロと涙を落とした。 「私ぃ、社長には申し訳ない  ことをしてしまったのに・・・」 「なんで?なんで三葉さんが  ”申し訳ない“んですか?  『ドラ息子のせいで人生に   キズをつけてしまった』って  社長は悩んでおられますよ。  最も”駆け落ち“をソソノかして  飽きたら逃げてきたドラ息子は  ボンヤリと生きてますけど」 「あの人、やっぱり家に  帰ったのですね・・・」 「さすがに気が咎めるのか、  大阪で二人が住んでた部屋の  住所は、帰るなり打ち明けて  『三葉をどうにかしてやって』  というあたりは・・・  いかにもあのドラらしいと言うか、  ”一人で生きれん奴“ですわ」 「・・・気の弱い人なんです」 三葉姉ちゃんは呟いた。 「社長が結婚に反対した理由、  解るでしょ?あのドラの  真実味の抜けた優しさと  働く意欲のない姿勢、加えて  恐ろしい母親がついてる」 「そりゃ、大したドラやなあ」 アンちゃんがついポロリ、 みんなもうなづてしもうてる・・・。      
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