「そして、僕らは恋に落ちた」

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「『家を出よう』と言うたのは  ドラですってね?本人が  言ってました・・・たぶん  彼も別の人生を歩きたかった、  あの母親から逃れたかったと  私は考えるとこもあるんです」 「大阪へ来て、市内の菓子屋に  二人で勤めました。2ヶ月は  あの人も嬉々として働いてた。  でも・・・・・・」 三葉姉ちゃん、顔が涙で ビショビショになってる・・・。 「あんたの腕に負けて・・・  男はやる気を失うた・・・・」 天風堂のじぃちゃんに 答えたのは鈴ちゃん。 「ドラには菓子職人の才能は  ありません。素人の私がみても  解りました。まだ商才があれば  救われたけど・・・・・」 「うわっ、ナイナイ尽くしや❗」 アンちゃんは自分で言い過ぎと 思うて、口に手をあてた。 「頼りなさをカバーするために  母親が擁護して生きてきたことが   彼の人生にやる気を削いだと」 「でも、鈴ちゃん、だからといって  知り合いもない大阪に、三葉さん  独りをおいて帰るやなんて❗」 “マメゾー”の奥さんの怒りに 梅本先生の奥さんもうなづくし、 僕のお母さんも 「アカン❗アカンアカンアカン❗  そんな男はアカン❗家庭事情も  ヘッタクレもないわ❗  出ていってくれてよかったんや❗」 「そうや❗そうや❗」 アンちゃんとしのちゃんは 両端から三葉姉ちゃんの肩を ポンと叩いて笑った。      
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