「そして、僕らは恋に落ちた」

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「ホントのことを言うと  私も、これが恋愛なのか・・・  よく判らないところは  あったんです。家族なしで  ずっときて・・・なんだか  友達にも心打ち解けることも  ないままに二十年以上が過ぎて  優しくされて・・・  気持ちの拠り所っていうか、  寂しさを埋めたような・・・」 三葉姉ちゃんの言葉に 何べんも何べんも 兄ちゃんはコクコクしながら ずっと涙を流してた・・・。 兄ちゃんも同じことやった。 寂しい暮らしの中で 一緒にごはん食べて、テレビみて 一緒に笑ってくれるだけで あんな冷たい女にでも感謝してた。 「親に・・・棄てられたような  ものでしたから・・・あの人が  ある朝、ふいと居なくなって 『ああ、私って要らない  よほど要らない人間なんだ』  ・・・そんなことを考えたら  働くのも、なにもかも、全部  嫌になって・・・アパートを  引き払って・・・・」 「この空港の見える町へ?  でも、どうして、ここ?」 アンちゃんが聞くと 三葉姉ちゃんは、鈴ちゃんをみて 「鈴子さん、名古屋のお店に  仕事でいらしたとき、よく  この町の自慢をしてらした、 『私のエデン、楽園や!』って」 そう言うた。 「でも、池のそばに・・・  ”棄てうさぎ“・・・なにが  楽園なんだって、腹を立てた  のと同時に、子供達が池へ  飛び込もうとして・・・」 「ひどい目に合わせました」 「いえ、鈴子さん!  あの子達もそうですが  あれから、ここの皆さんが  自然と私を受け入れて  私を大事にして下さって  ・・・私、毎日、ここに  足が向くようになって  ここで癒されて・・・・」 「何を言うのよ、癒されてるのは  私達なんやから❗」 「ホンマや❗子供たちも  どれだけ”ひめりんパン“の  お姉さんを、三葉さんを  慕ってることか❗」 アンちゃんとしのちゃんは 両端から三葉姉ちゃんの 肩を揺すって泣いてる・・・。      
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