「そして、僕らは恋に落ちた」

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「その・・・”ひめりん“ちゃんの  元飼い主さん、今、警察で  事情を聞かれてらっしゃいます」 鈴ちゃんの言葉にみんな、 動きが止まった。 「いったい何処のどいつや?!」 天風堂のじぃさんが 怒るのは無理ない❗僕も、 僕もムカッときて、つい ひめりんの方を見た・・・けど ひめりんの瞳は「怒らないで」 って、言うてる・・・・。   「あの川沿いに何軒かある  建て売り住宅の一軒で、  御夫婦ともに港の工場に  お勤めでした。でも、この  訳のわからん”流行り病い“で」 「失業・・・?」 僕のお母さんの呟きに 鈴ちゃんは頷いて 「住宅ローンやら諸々  払えなくなるわ、御主人が  事故起こすわで・・・  夜逃げになったそうです」 「夜逃げ・・・・」 誰ともなく声がでた。 「お子さん二人が可愛がってた  ひめりんを連れていくわけにも  いかないままに、エサを入れて  散歩の人が多い池のベンチに」 「なるほど・・・狸がケージを  転がして、エサを横取りしてる  うちに転落」 しのちゃんに頷いてから 「歯も爪も手入れはいいから  主人とも不思議に思ってたの」 梅本先生の奥さんは ひめりんを抱っこした。 「車で家族で生活してる最中  お子さんが発熱されて  困っているところを警官が  声をかけたそうです。  うちの父、『弁護士無料相談』の  仕事もしてるでしょ?  そこに相談があって・・・  ひめりんのことも判明しました」 みんな、肩を落としてため息。 「人って・・・生きるって  ホンマに厳しい・・・  辛いわあ・・・・三葉ちゃん、  池にハマって冷たい思いを  させたけど・・・ひめりんに  免じて・・・許してやってぇ」 涙ぐんでる奥さんの手から ひめりんを受け取った三葉姉ちゃんは 「許すなんて・・・  ねえ、ひめりん、あなたが  何一つ恨んでないのに  私が恨むわけない・・・・・  私・・・どんなことも  もう恨んでなんて・・・」 「エエ子や❗ひめりんも  三葉ちゃんも❗みなエエ子や❗  これからや❗これから  幸せになったら、それで  それでエエやないか❗」 じぃさん、僕も、僕も そう思う❗カンペキな人 ないねん❗みんな、苦しんで なんとか幸せになろうと 頑張ってるんや❗なあ、ひめりん❗ ひめりんは三葉姉ちゃんの 頬をペロペロ・・・涙を 拭ってやってる・・・・ さすがやあ、さすが僕が 好きになったシンデレラや❗
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