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 駐車場に車を停めたまま水族館から歩いて数分の場所。高台に位置した水族館から、国道に沿って歩くと海岸へと続く階段がある。下った先には太平洋を一望出来る海岸がある。俺と架純は海岸に降り立った。砂場に足を取られながらも架純は海へと近づいていく。 「うーん、気持ちいい」  両腕を広げ、体を伸ばすように深呼吸をする架純。架純が鴨川に行きたいと話した時から、何かあるのだろうと思っていた。俺も俺で架純に伝えたい事を胸に秘めながら、タイミングを窺っていた。 「……やっぱり海っていいな」  架純は靡く髪を押さえ目の前に広がる景色を眺めている。潮の香を乗せた風を身に纏い、橙色へと移り変わる空を背に隣に立つ架純が綺麗だった。 「私ね……小さい頃に海で溺れた事があるの」架純はゆっくりと話出した。 「家族と海に遊びに行った時だったかな……あれ以来、海が怖くなっちゃってね……近づくのも極力避けていた。それから大きくなって、こうして見ると……好きになってきてね。何だろ……抱えている不安な事だったり、嫌な気持ちが和らいでいく気かして」 「……あの時もここに来たよな?」  三年前の修学旅行に架純と一緒に抜け出して、この場所を訪れた。その時に架純から突然別れを切り出された。架純の父親の転勤で引っ越さなければならなくなったと伝えられた。架純は泣いて俺の胸に飛び込んだ。最後は再会を誓って、固い握手をした記憶がある。 「でも、こうしてまた会えたね」  こうして架純と再会出来るとは思わなかった。再会を望む事を心の中では願いながらも、どこか現実的な問題が立ち塞がる。それは時間や理屈的な事だけではなく、互いに気持ちを持ち続けているかどうかだった。 「隼人君と会ったら、ここに一緒に来たかったんだ」  加純の事をもっと、もっと理解したくなる衝動に駆られた。 「私がこっちに戻ってくる事になって、隼人君に連絡しようと……って隼人君さぁ、私が転校してから、携帯とかSNS変えたでしょ?」急に話の矛先が来て狼狽えた。
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