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隣にレリサが並ぶと、ラルクが差し出した右手に彼女が左手を乗せた。そのまま誓いの台に上がり、向き合って見つめ合う。
「こんな日が来るなんて、夢のようだよ」
「今ならどんな夢も叶いそうね」
「それなら、何もないこの場所を再興させよう」
周囲を見回し、ラルクは目を輝かせながら想像する――ロートランドのように様々な船が寄港し、商店や人々で賑わう通りを。
「どの国の船も人々も、安心して訪れることが出来る場所にするんだ。一番にフォーシャイアの船を招待するよ」
「それがあなたの見ているものなのね。わたしも同じ光景を見たい」
「これからは、それぞれが見ていたものを、二人で一緒に見ていくんだ。レリサが見ているのはどんな未来?」
「そうね、新しく家族が増えていくことかしら」
「家族?」微笑むレリサを見て、その意味に気付く。にやりと口角を上げてラルクは言う。
「その未来、すごく待ち遠しいよ」
二人は天に向けて手を掲げ、お互いを見つめ合っていた目を、握った手に向ける。これは結婚の誓いの証。太陽が二人を祝福するかのように惜しみない光を降り注ぐ。
責任を感じるが、溢れる自信の方が勝った。
握りあった手を下ろすと、鐘楼から鐘が鳴り響いた。この日のために設けられた鐘は、この先もこの場所で音色を響かせることだろう。
人々の間から上がった拍手が遠くまで広がっていく。
ラルクは胸が一杯だった。
全てが輝いて見える。
宙を眺めながら、ふと思う。
親父は空から見てくれているだろうか? 海賊の頭にはなれなかったけれど、違う場所から頂を目指す姿を。
レリサと向き合い、身を寄せ合う。額を寄せて、尋ねた。
「もう誰も邪魔はしないよね?」
「もちろんよ」
ラルクは顔を寄せ、レリサと唇を重ねた。とろけそうな口づけの味は、幸福の味だった。
海上に向けて祝砲が上がり、トランペットが軽快な音を奏でる。
鳴り止まない拍手が大空の下で響く。
二人を高みへ導くように、いつまでも、いつまでも。
どこかの海上で、ソールが牙を天に向けて大きく跳躍した。水しぶきを上げ、日差しを受けた体を眩しく輝かせながら――。
―完―
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