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まるで合図したかのように右舷が持ち上がり、船の高さを優に超える垂直な波の壁が現れる!
それを見た仲間たちは慌てた。
「うわっ、すげえ」
「これ、ヤバくないか」
「落ち着け、大丈夫だ」
リュートだけは嬉しそうに目を輝かせ、それを見ていた。
波の壁の中に黒い紡錘形の影が見える。船ほどの大きさの巨体が、迷いなくガレオン船に向かって突き進んでくる!
「さあ来い、ソール! 何も恐れるものはない!」
空に広がった雷光が、その光景をはっきりと映し出す。
波を突き破りながら、マストよりも太くて長い牙が船上に伸びてくる!
崩壊した波が、轟音をたてながら甲板に海水をぶちまける。
そして――
巨大な海獣が、船の上を跨ぐように跳ぶ!
いつまで続くのか、長いこと灰色の胴体が船の天上を覆う。そのまま落下したら船は真二つ、瞬く間に沈むだろう。しかし巨体は宙を舞い続ける。体の一部がマストに当たると、小枝を折るようにいとも簡単に折れ曲がった。
――グウォォォォォン
ようやく尾ひれが船を飛び越え、大きな振動と傾斜が船にもたらされる!
「落ちるぞ、掴まれ!」
頭上から海水を浴びながら、六人は咄嗟に縁にしがみつく。復元力で戻る傾斜角度を超え、船は横倒しになる。そのまま転覆するかに見えて――。
運良く波に押し上げられ、船の傾きが戻った。
しかし、甲板の位置が低くなっている船体中央は、溜まった海水が縁から溢れ出ている……!
浮力が重力に負けるのは時間の問題だ。
ようやく船内から人が出てきて、大声を上げ始めた。それを見たリュートは、海中へと消えたソールに敬礼をした後、笑顔で仲間に言った。
「お待ちかね、俺たちの出番だ!」
「待ってたぜ!」「おう!」
肩からさげていた皮のフードを被り、それぞれが持ち込んだ、ナイフや銃などの武器を手にする。
「レッドティアーズの参上だ! 襲え、奪え、荒らしまくれ!」
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