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3
あれから、上杉からは連絡は無い。俺もしていない。
俺が待たなければ、俺が話かけなければ、俺と上杉の関係なんて何も無くなってしまう。
それを思い知らされる気分だ。
上杉は学校には通ってきているらしいし、元気にやっているみたいだ。
まともに出来ないのは俺だけだってことだ。
あの日からあまり食欲もないし、上手く寝付けない。
逆に言うとその程度なので学校には登校しているけれど、自分から上杉に対して何かをしようという気力は無かった。
◆
「なあ、喧嘩してるみたいだけど、いい加減折れてやったら?」
廊下でばったりと上杉の友人と鉢合わせた。
上杉の気持ちは、挙動不審な行動や俺に話かけるときに真っ赤な顔をしてた事で多分周りの人間にはバレバレだっただろう。
まあ、それから逃げなかった俺の気持ちも知れ渡っているんだろうから、こんなことを言われるのだろう。
だけど、上杉がもう俺に触れる事が嫌だという事は知らないらしい。
全部ぶちまけて八つ当たりしてしまいたい気持ちに一瞬なったが、それはあまりにも惨めすぎた。
だからといって、はいそうですかと話は聞けない。
だって、俺がおれてやるっていうのは多分、別れ話をしてやるってことで。それだけは嫌だった。
じゃあ俺にできることは、ただ単に無視して今の話を無かったことにする位しかない。
何も答えず通り過ぎようとすると、苛立ったみたいに「おい。」と声をかけられて腕を掴まれる。
気持ち悪い。吐き気と共にグラリと眩暈がする。
目の前が薄暗がりの様だ。
そのまま足の力がガクリと抜けて、何も見えなくなった。
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