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7
結局先生は「途中で倒れても大変だしね。」と言いながら黙認してくれることになった。
立ち上がると案の定ややふらつく。
そっと体を支える上杉の位置が近すぎる気がした。
いや、遠くから物理的に支えるのは無理なのだから当たり前の距離の筈なのに、ああ、性的な色を含んでいなければこんなに簡単に触れることができるのか。
なんだか少しだけ泣きそうになってでも、こんな場所で泣くわけにもいかず慌てて上杉から体を話す。
「悪い。親に連絡入れちゃうな。」
なるべく自然に見える様に、何でもない様に話す。
母親はすぐに電話に出た。
友人が送ってくれるっていうから心配しない様に。そういうと母は安心した様で、今日は仕事遅くなるけど必ず帰るからと言った。
別に無理をする事は無いと笑った。多分笑えていたと思う。
帰りの道中上杉とは特に何の会話もしなかった。
いつもは話しやすい様にと色々考えるのに、今日は何もできなかった。
あの日の事、全部忘れて無かったことにして、何も無かったことにするのが一番なのは分かっているのに上手くできそうにない。
貧血で頭にろくすっぽ血がまわって無い所為にしてしまいたい。
それで、家に帰ってゆっくり休んで明日からは今まで通りになっていて欲しい。
「……あの、半田君家ついたらちょっと話したい事あるんだけど。
具合悪いからやめといた方がいい?」
残念だけど、今日はちゃんと穏やかに休めなんてしないのかもしれない。
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