秋色のおくりもの

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「今から旅行……って?」 帰り道とは別の方向へ車を走らせる僕に、きょとんとした顔で訊く。内緒にしていたのだから無理もない。 「いわゆる卒業旅行かな。おじさん達にも了解をもらってるよ」 おじさん達というのは、桃子の両親だ。 親同士の仲が良いとはいえ、嫁入り前の娘を勝手に外泊させるわけにはいかない。そう、いくら僕のところに嫁に来るといってもだ。 桃子は目を潤ませて、これまで忙しさにかまけ、ろくにデートもしてやれなかった僕を見上げた。 「卒業おめでとう、桃子」 「ありがとう……嬉しい、透さん!」 これは君へのおくりもの。 だけど、半分は自分のため。 なぜなら、僕も卒業したいから――
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