彼女は月の裏側で

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ちなみに、私は彼女……佐藤とは友達ではない。 課も違う。 受付の佐藤と、営業の私。 美人な佐藤と、そこそこの私。 ナイスバディでバインバインな佐藤と、ナインナインな私。 ……同期だろうが、同じクラスだろうが、仲良くなれる気がしない。 もちろん、同期でも無いし、彼女との接点なんて一つも無かったのだ。 ……今日の午後一時までは。 *** ーー午後一時。 営業先から戻った私は、激しい腹痛に襲われていた。 原因は分かっていた。 朝に飲んだヨーグルトドリンク(自社製品)だ。 賞味期限を三日ほど過ぎたそれを、私は躊躇う事無く喉に流し込んだ。 だって、乳酸菌はお腹に優しいって言うし。パッケージにも、『あなたを守る乳酸菌』って書いてあったし。 実際は、守ってもらうどころか腹痛を起こして、グルグルゥーだの、ギュギュギュウーだの、身体中から聞くに耐えない音を撒き散らしながら、恥ずかしくも会社のトイレの片隅でうずくまるはめになってしまったのだけれど。
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