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「一緒に御飯食べにいく人、この指止まれ!」
延長もなく、さっぱりと二時間で終えることのできた宴席の後、カヨコさんは上機嫌で私たちの前に人差し指を差し出した。
クラブホステスも兼業しているカヨコさんが抱えている太客の一人が、御馳走してくれるというのだ。
「『お友達も連れておいで』って」
徒党を組んで出かけるのは苦手だけれど、先日の『スカートボタン飛ばし事件』で、カヨコさんのたくましさの源を知りたく思っていた私は、その指に乗っかってみた。
「ミノリは、どうする?」
生意気だなんだと扱き下ろしつつも、一応大人なカヨコさんは、誘いをかける。お手洗いから戻ったミノリは、得意の困ったような八の字眉毛を見せた。
「……パパに悪いから」
「へぇ、お父さん厳しいんだぁ。やっぱり、まだお子ちゃま……」
「いえ、父じゃないです。パパです」
「父じゃないパパ……」
「パトロンって言った方が、分かりやすいです?」
気弱そうな困り顔とは真逆の爆弾発言に、卒倒しそうになりながらもカヨコさんはミノリに詰め寄る。
「パッ……あんた、援交やってんの?」
「そんな汚いことしませんよ。お食事して、カラオケ行って、話し相手をするだけ。私、処女ですもん」
「ショッ……」
「皆さんは楽しんできてくださいね、では……」
見た目は子ども。
行動も子ども。
考え方だけは、したたか。
飄々と立ち去るミノリを私は面白いなと感心したけれど、カヨコさんが荒れ狂ったことは言うまでもない……。
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