秋のデートと俺達の目標

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「ふ、ぁっ……、こ、擦れ……て」  勇星は無言で、奮闘する俺を凝視している。その息使いがさっきよりも荒くなっているのは気のせいだろうか。 「あぁっ、あっ……、なんか、変なとこ当たった気がする……!」  一瞬の刺激に中が驚いたけれど、すぐにそれが「気持ちいい所」だと理解して腰を振る。馴染んできたのは多分、勇星の我慢汁が中で溢れているからだ。堪らない快感──。俺は勇星の上で仰け反るようにして体を支え、大股を開いた状態で何度も腰を上下させた。 「あっ、あっ……! 気持ち、いっ……」 「音弥、……」  見れば勇星の顔は赤くなっていた。単純に興奮しているせいだと思ったけれど違うらしい。その目はどこか泳いでいるというか、珍しく動揺しているというか。 「な、何だよ……どうしたの、勇星……」  一度腰の動きを止めて問うと、動揺していた勇星の表情が途端に困ったような笑顔になった。 「悪い。何かさあ、想像してたより音弥くんがエロかったから……」 「エ、エロ……?」 「大股開いて腰振ると、勃起したそれが揺れるじゃん。目の前でそんなストリップみてえなことされたら興奮するだろ。でも音弥くん自分のエロさに気付いてねえから、何かこっそりAV見てるような気になってさ、……」 「っ……も、もうやめる! この体勢やめる……!」  まあまあ、と勇星が俺の腰を支える。 「いいモン見せてもらった礼に、俺もいい働きするからよ」 「──あっ!」  下から突き上げられ、一瞬、息が止まりかけた。 「あ、ああっ……! そんな、しちゃ……」  膝を立てた勇星が、何度も何度も俺の中へと腰を打ち付ける。反動で俺の腰も動き、俺と勇星のぶつかり合う音がリズミカルに響いて── 「う……あぁっ、勇星っ、……! 激しいって……! こ、このまま、だと俺……!」 「辛いか」  何度も首を横に振り、俺は勇星の胸板へと両手をついて囁くように訴えた。 「……イッちゃう」 「っ、……音弥、馬鹿、てめぇっ……!」 「え──えっ?」  勇星が勢い良く体を起こし、俺を布団の上へと組み敷いた。 「天然で煽るのは反則だろ。優しくしてやれなくなる」 「お、俺何もしてなっ──あぁっ、あ!」  勇星の腰が打ち付けられ、そのたびに俺の体が跳ねる。背中が布団から浮き、足の指が反り返る。勇星のそれが奥深くに到達するのと同時に押し出されるようにして喉から声が迸り、激しさと熱さとで目の前に火花が散った。 「ふ、あっ……! あ、あっ、ゆうせ、……!」  真剣な顔で俺の中を何度も貫く勇星。癖の強い髪の毛先から汗が飛び、薄らと開いた唇の間から荒い息が洩れている。  俺はその肩に両手を置き、力任せに勇星の体を抱き寄せた。 「……音弥、……」 「あったかい……。俺いま勇星と一つになってる」  耳元で勇星が笑った。 「一緒にイきたい、……勇星、俺もう……」 「ああ、俺も……」  より一層強く勇星が腰に力を入れ、抱き合ったまま互いに呼吸を弾ませる。勇星の体から滲み出る汗も吐息も声も全部が、泣きたくなるほど愛しい。 「あ、もう……俺、──あっ、ああぁっ」 「音弥──」  密着した状態で絶頂を超えた俺達は、その後も息が整うまでしばらく抱き合っていた。 「大好きだよ勇星……」  朦朧としながらもそれだけは言えた俺の頬に、勇星が力無く笑って口付ける。 「俺も大好き」 「………」  ──絶対に『Genesi』を完成させる。大好きな勇星の大好きな曲を、完璧な形で残したい。  それはきっと、俺が勇星に出会い惹かれた時から決まっていたことなのだ。
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