MEMORY

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「それ、言い方、すっげエロくねすか」 「そすか?辛かったら言って下さいね、休憩入れるんで」 うつ伏せの敦志(アツシ)、半ケツの敦志、半裸の敦志。スポーツしてますってでっかい声で言ってやがるこのケツ。プリっぷりしてやがります。うまそうです、物凄く。 「うっす」 でも。。お仕事モードな俺は勃起したりしねぇからね。 「これ、どーぞ。腕、しびれてきたら抱っこしてみ」 勃起はしねぇが、ムラッとするよね。ムラムラしすぎるとイラッとしてくるよね。 「あざす」 つーか、何なの。この人の背筋芸術もんなんですけど。こぉ、なんつーか。ここ、この盛り上がったとこ筋ごとゴリっと掴みたくなる。そして叱られたい。 あ、んなとこに痣とか。。どこにって?……ぜってぇ教えてやんね。 「じゃ今日は筋彫り仕上げたら終了で。急ぎますんで容赦なく痛いと思います。耐えてくださいね」 沢山の皮膚に墨を入れてきた。 今日、俺は今、この瞬間、初めて敦志の体に触れる。そして一生消えない傷をこの体に彫っていく。 客と俺の間には、ただ発注された画を客好みに仕上げて納品する。いつだってそんだけだった。それ以上もそれ以下もない。最後に滲んだ血を拭き取れば、そこでエンディング。二度とその人と向き合うことはない。 そもそも作業中に俺が対峙しているのは、俺の手の中にある画であって、彼ら自身ではない。キャンバスに画をのせるために、白紙の皮膚の状態をみるだけで。 紙と違い伸縮するうえ部位によって厚みが違う。脂肪の上と筋繊維の上でも針の入りかたが違ってくる。
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