MEMORY

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湯気が立つコーヒーを啜りながらとめどなくどうでもいい思考に流れてしまう自分にげんなりしつつ、出された提案に上乗せする。 「毎月一回、酒とセックス付き、きっちり24時間で10万。これでど」 複雑そうな顔、いやいやそこは怒れよと思う。怒鳴りちらして泣き落としかまして、みっともなくすがってくれば心置きなく振り払って部屋を出れるのに。 「了解」 「馬鹿たれか、了解すんなアホ」 もう連絡はしねぇと言って部屋を出た。案外居心地がよかった、案外気もあったし、お互い自由だがお互いちゃんと気持ちは通じていた。じゃがりこはいつも九州しょうゆ味だったし。 そんな関係。 でも。 俺はどこの誰と付き合っていようが、誰を好きだろうが、どこにいようがあのクソ野郎のお抱えの女だってことだけは常に底辺にあって。 SHOPを円滑に続けていくためにもあの男の息はかかせなくて。なんつってもあの圧から無事に逃げ切れる自信もねぇ。あのセックスの代わりが見つかるとも思えねぇし。結局俺はいつまでも広い広い籠の中で飼い殺されてる犬のまま。 ここまで堂々巡りの思考を巡らせて、京王線に乗り換えると同時にクソ野郎の存在は一旦隅っこの隅に押しやる事にし、身辺整理は完了した気に無理くりなることにした。 付き合っていた男とはきっちり別れた、俺、今、お前の事しか考えらんねぇ。 嘘ではない。 晴れてフリーを装って、敦志とデートしよう、とっとと一緒になってぜってぇ離さねぇ、とか。 敦志の綺麗としか言い表せない裸体と、魂むき出しのなんの飾り気もねぇまっさらな気配とか、勝手に想起しながら“別れてきた”と速攻で連絡を入れた。体空いてる日デートしようとも勿論付け加えて。 同時に隅の隅で、静かにあのクソ野郎を絶つ算段を考え始めていた。
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