MEMORY

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「おい、もう行くのか」 手近に掴んだシーツで腹と尻を適当に拭く、からのゴロゴロベッドを一回転。 これであらかた付着した体液はぬぐえる。 隣では試合後のボクサーさながらの哀愁を漂わせ、ベッド隅に腰を下ろし丁寧に股間を拭いてるクソ野郎。 んな綺麗にしたとこですぐシャワー浴びんだろ?そもそもドロドロのベタベタが嫌ならこんな悲惨な状況に仕上げなきゃいーんだ。 「あたんまえだ、こんな時間からおっぱじめやがって。飯食う時間がねぇじゃんかよ。まじお前クソ」 この男はうさんくせぇ詐欺集団の頭で、うさんくせぇ世間からはぐれて、淀んだ世界の露頭を彷徨う前途ある若者を拾ってきては飯と義理を与えては、きっちり挨拶の仕方から叩きこむ、そんな世界の頭で。 俗にいう所の反社会的組織のど真ん中に座してるような男で。正確にはど真ん中に鎮座してるおっさんの傍らに突っ立てるような。 そのおっさんがおっちんだら、次は名実ともにコイツが頭確定なわけだが。 肝心のおっさんは現在肝硬変でご入院中。ハゲ散らかした80越えのじーさんはもうきっとこの屋敷には戻ってこない。 「シャワー一緒に浴びてから行けよ。時間まだいけんだろ?桜牙(オウガ)機嫌直せ、悪かった」 俺はこの男を食いもんにしようとこの世界を覗きこんだ。単純な好奇心。単純な無知。単純な愚者。 「はぁ?ダッシュで行ってもアウトだボケ。今日の面子分かって言ってんだろお前。あの人ら、ほんと扱うの苦労すんだぞ。高みの見物決め込んでるてめぇには関係ねぇ話だろーがな」 下ろしたてのスーツが無残に部屋に散乱していて無性に腹がたった。一つずつひったくるように拾い、ワイシャツのボタンを乱暴に止めながら俺は雄くせぇ部屋を後にした。
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