MEMORY

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度合いも質も明らかに劣化したキスが酸素を奪う。 この感覚はあまり好きじゃねぇ。 射精すんでで突然、しかも当たり前みてぇに一方的に舐めまわすようなキス、最悪だ。一気に冷めた俺とは対照的に男は勝手に射精してお前も気持ちよかったろってドヤ顔かます。 基本的に俺はキスという行為が嫌いだ。 嫌いだが。 舌先と舌先が絡むこの感じはありかもしれん。漏れる荒い息もガツガツ無遠慮に出入りする敦志の舌も、ありかもしれん。 しゃぶってびっちょりになった敦志の口元が、俺の口元までベチャベチャにしていく。肌が触る度にその範囲は広がっていき、口も首も胸もどこを喰われているのか分からなくなる。 分からなくなりながら、どうしようもなくこの男が好きなのだという感情だけが爆発的に増殖してその他の感情を食いつぶし俺ん中を占拠してく。 俺も敦志も十分に平静さを手放した。 時折お互いの股間がカチンとぶつかっては、なんとも言えない痺れを残して俺を誘う。 それでもどこか遠慮がちに、1本目の長い指が穴をまさぐり入ってきた。中の感触を楽しんでいるのか、それとも中で迷子なのか。敦志の怒涛のキス攻めが止んだ。 あぁ、そうか、『きもちよくなれ』はこの事だったのかとぼんやり思う。勘違いしたのか、俺が指を入れてくれと言ったんだと。敦志は馬鹿だ。入れて欲しい時は自分でお前の手を尻に持ってくっつーの。 日頃から俺を気持ちよくさせてやれるか自信がねぇっとぶつくさ言ってる姿が浮かんだ。自分のセックススタイルは相手にいつも痛い想いをさせてしまうからと。 無言の視線が暗がりに浮かぶ。熱に浮かされ俺を欲しがる男の目。それがあまりにも欲にまみれて余裕がなくて。日中みるどこかぼやっとしてて能天気で通年快晴のうような男の目とは別人で。そのくせどっか不安げ。 酷く疼いた。 「サービスタイム」 ミシミシという効果音が付きそうなほどに締め付けられていた腕を振りほどき、今度は俺が敦志の体をベッドへ放った。 解かれた腕に重い痛みがあとを引く。吸われたのか噛まれたのか分からないそこらじゅうの痕跡も痛みと快楽をない交ぜにして俺の脳へ痺れを伝えてくる。 この男は獣だ。それも生粋の獣。 枷を外してやれば小さな加減はまったくできなくなるらしい。この力で女の乳を揉めばそりゃ手ひどくビンタされても当然だな。 「口開けろ」 爛々とした目で俺を見上げながらも素直に口を開く敦志。 そう、もう一つ気づいた。こいつは最中、ことさら興奮度合いに比例して無口になるようだ。やってることはアクティブすぎるほど激しいのにペニスが勃起してからというのもほとんど言葉を発してねぇ。 おかげで数段目がよく喋る。好きも、愛してるも、欲しいも全部言葉よりダイレクトに俺に伝わって来る。 下の歯を指で押し下げて、丁寧にいやらしさを含めて指をしゃぶらせた。 っち、噛みちぎってくれてもいいのに。 用が済んだら敦志に尻を向けご挨拶程度、ナニを撫で上げ口に含む。この圧迫感がたまんねぇ。少し顎を閉じれば俺の歯がペニスに食い込む。更に力を加えれば敦志は悲鳴を上げるだろう。 ・・・やってみてぇ。
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