MEMORY

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※※※※※※※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※※※※※※※ 二年前―― 俺と同じ年の男がいた。当時、25歳。名前は(ほたる)。呼び名はケイ。そいつは傷害罪で2年4カ月の刑期を終えて出てきたばかりだった。 覚せい剤所持で5年の執行猶予中、付けが溜まった客と共に店の上がりをかっぱらって逃げた男を殺した。 関東中越を無作為に逃げ回る2人を追い、女の故郷らしい青森まで追い立て山中で捕まえ男を殺した。両腕を折って、両足を折って、血が出ないようにと太い枝を横一文、首にあてがい「せーの」で飛んで踏んだ。男のわめきが布を噛ませた隙間から絶えず聞こえていたが、ケイの着地と同時にグフリと妙に聞き取りづらい内に籠った音がした。 ケイの重量が男の体を柔らかい土に押し込む。加えられた力は土が吸収し大地に逃がしてくれるようだ。おかげで男は「せーの」を三度くらった。 ケイは怒っていた、金がないから。 逃げた2人は金を持っていなかった。すっからかんだった。逃亡中、使い果たしたと女が軽く言った、ふんっと言った様子でだ。気が強い女だ。 だから余計にケイは怒った。 死体が転がる横の木に女をしばりつけ、赤ワインを頭からぶっかける。全裸でだ。 長い髪は入念にワインを含ませた。 これはなかなかいい眺めだった。闇の中、赤いワインは色を持たず、青白い裸体に黒い墨が流れ、甘く芳醇な香りが空気を塗り替える。 1つだけ残念なのは、女が吐き出す罵声が酷く嫌悪感を持つ声だったてこと。 死体は土に埋めてしまいだ。広大な私有地、長く放置されたままの山林、間違っても誰かが目撃、発見などと奇跡が起きる可能性は1%以下。 季節は初夏。上がり続ける気温と湿度で肉が分解される速度は速い。加えてあの死体を探す人間もいない。見つかる道理ははなっからない。 俺達が額に大粒の汗を浮かべ穴を掘っている間、女は夜の森を飛翔する虫たちのレストラント。 実にアートだった。だが、もう二度と穴掘りだけはまっぴらごめんこうむりたい。是非とも焼却炉を推奨する。 都内に戻り、ギャーギャーと騒ぎ立て未だに逃げようとする女の顔面を潰している最中に通報され逮捕。だから傷害罪。 そんなケイと俺はとても気が合った。
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