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この国は平和だ。誰も表立って人を殺したりしない。誰もが平等に教育を受ける権利があって誰もが最低限の生活を保障してもらえる。
この国は平和だ。
でも、ここへ転がりこんでくる10代の奴らはきっと平和じゃねぇ。みんな舐められねぇようにって目ん玉ぎらつかせて、出来上がってもねぇ細っぇ体に空気目いっぱい吸い込んで、目いっぱいでっかく見せて肩ひじ張って迷い込んでくる。
そして全員が確実に愛情が枯渇している。
そして全員が良いヤツだ。
何でもいい。こいつらにとって宇宙飛行士になる勉強と犯罪を犯す勉強はまったくの同価値。
何を学ぶのかが大事なんじゃねぇんよ。努力していることを見てくれる大人がいて。うまくできたら誉めてもらえて。一緒に飯を食ってくれる誰かがいる。
それが殺しでも違法でも関係ねぇ。カラッカラに乾ききった心ん中に“おはよう、ほら行くぞ”こんなアホみてぇな普通の言葉がどんだけそこに染みてくか想像つくか?
五年も寝起きを共にすれば、血のつながった関係よかずっと強固な信頼関係がここには出来上がる。
義理と人情とはよく言ったもんだ。この暗い地下の世界にこそ、いや、ここだからこそこの言葉は本物だと思える。
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