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「ごめ!遅くなりました。まじすんません」
本来の予約は20時30分。現在25時15分。
今夜は無理だと諦めてた。諦めて?や、ちげぇなぁ。
本心は帰宅時刻を知らせた時点で、可能なら夜中でも来て欲しいと暗に言ってた。
だってあいてぇもん。
「全然大丈夫っす。桜牙君も遅くまでお疲れさんっす。わ、何か顔大丈夫すか?」
駐車場に入って敦志の車を発見した時の喜びといったら。
もぉ一ヶ月分の疲れなんぞ一瞬でどっかいったよね。厳つい面並べた男気命!とかゆーあの人らの存在なんか宇宙の藻屑に成り果てるよね。
「大丈夫はそっちでしょ。大丈夫なんすかこんな時間に。顔?なんかついてます?ん?え、それ何」
お互い車を降りるやいなや歩み寄る。一歩を踏み出すスピードはいつもより早くて、頼りない駐車場の明かりの下でも敦志の全部はよく見える。
俺の目はこの人の事を見たがってる。愛想笑いの下に隠してる緊張した固い表情。
見えてるよ?ほら、今みてぇに俺の言葉を待ってるその一瞬。不安そうな探るような視線が俺を待ってる。
きっと、俺も今、まったく同じ顔してんだろうけど。
「ははは、余裕っしょ、俺、明日休みだし。したっけこれ飯。今日は無理かと思ってのんびり自炊してたんす。で、やっぱ作りすぎるつぅーね。から持ってきてみた。食います?あ、や、飯済ましてきたんなら明日でも食べてくださいよ」
飯。
飯?
飯だと!?俺に!?
何この人、デザートは俺でとか言っちゃうわけ?コテッコテのやついっちゃうのか!?
「まじすか。そいや朝から何も食ってねぇ。思い出したら死ぬほど腹減ってきた」
「はぁ?朝から?ちゃんと食わねぇと。体資本すっよ。心配だな、もぉ。じゃ、飯食ってからにしましょか」
「あ、や、大丈夫っす。こんな時間まで待たせたし、先、やっちまいましょ。俺が落ちつかねぇし」
いやいや飯、いやいやいや、と。そんな押し問答を内心楽しみつつあっという間に室内。
1階を仕事場、2階を生活空間に改装してここを買ったのは5年前。
「始めましょーか。じゃ、脱いで下さい、下だけでいっすよ。あ、下着はどーしよっかな。ずらしましょっか」
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