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小さな私のベッドに座り後ろから私をぎゅっと抱え込む寺川。
つい先程まで寺川から受けていた熱が私の体にまだ熱く残っている。
「由香里……好きだ。愛してる。何度言っても言い足りないな。」
何度も何度も繰り返される寺川にしては甘過ぎる言葉に耳が擽られる思いがする。
後ろから回された寺川の腕に私の手を添え力を込める。
「私も寺川の事が好き。愛してる…とっても。」
寺川に振り向かされまた深いキスが降りてくる。
私も寺川もきっと自分を見失っていた。
相手を思う気持ちが強すぎて、自分の素直な気持ちに蓋をしてしまっていたのかもしれない。
だから、寺川に私がこっそり行ったあの時に見た光景の事をちゃんと聞いてみた。
「ああ、それ、同じ課の先輩だよ。あの日は部内の飲み会で後から直ぐに他の奴らも出てきた。それに彼女は結婚して退社したよ。」
あっけらかんと答える寺川に拍子抜けしてしまう。
「そ、そうなの?」
「あの日は、彼女の送別会だったんだ。だからよく覚えてる。あの時、彼女に言われた事ーーー」
「言われた事って?」
「次は寺川くんの番だねって。」
と同時に私を抱き締める寺川の腕の力が強くなる。
「番?」
「彼女をいつまで待たせる気って。グダグダ悩んでないでさっさと奪って来いって。」
「本当に?あの時、見た印象だと凄く綺麗な人なのにそんな事いうの?」
「ああ、そうだよ。黙ってると清楚な感じの人だけど話すとめちゃ、男気のある人でさ。男前だよ、あの人は。仕事もバリバリやるし、プロポーズも自分からしたしね。」
「えっ、自分から……。」
「て言うか、お前、ちゃんと俺に聞けよ。何、自分一人で完結させてんだよ。」
回された手で軽くデコピンされる。
馬鹿だな……私。
あの時、ちゃんと聞いてればこんなにも遠回りする事なかったのに。
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