雨月・うげつ

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雨月・うげつ

いつからだろう。 夜空を見上げるのが癖になったのは。 もう一緒に同じ月を見ることはないのに…。 同期の寺川と付き合いだしたのは入社した年の冬のこと。 丁度、街中がクリスマスのイルミネーションで彩られている頃だった。 入社以来、寺川とは趣味や物事に対しての考え方が似ていて私達の距離が縮まるのにそう時間は掛からなかった。 気付けば私は寺川に対して特別な思いを抱いていた。 もし受け入れて貰えなかったらって思うと中々気持ちを打ち明けるなんて出来なかったけどたまたま仕事帰りに二人で立ち寄った会社近くのイルミネーションを一緒に見ていたら不思議と素直になれてその思いを私は告げた。 「寺川の事、好きだよ。」 って。 すると、寺川も私に特別な思いを抱いてくれていた。 最初からお前の事、単なる同期だなんて思ってないって。 その日を境に私達は単なる気の合う同期から恋人と呼べる関係となった。 順調に交際も続き気付けば三年と言う月日が流れていた。 私もそれなりの年齢となりそろそろ結婚という言葉を意識しつつあった。 寺川の側にずっといたいな…… きっと寺川も同じ思いを抱いてくれていると感じていた。 私の思いは膨らむばかりだった。 けれど私達の関係が大きく変わる出来事があった。 寺川が新しく出来た事業所に異動することとなった。
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