真夏の砂時計

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休日、私がいつものように一人暮らしをしている部屋から出かけようとしていると、 「どこ行くのー?」 と呼び止められた。一人暮らしなので部屋には誰もいないはずだ。 振り返ると、そこには小学校高学年から中学生くらいだろうか、白のワンピースを着た少女がポツンと立っていた。そして彼女は何故か自分の身の丈ほどもある大きな砂時計を背負っている。 「いや誰だよ」 「ここに居させて、これが全部落ちるまででいいから」 少女はそう言うと、背負っていた砂時計をドスンと床に下ろした。 砂時計の砂だけがゆっくりと落ちていく。 「わかったよ」 そこから時間はゆっくりと流れた。私は部屋で本を読んで過ごした。少女もなにをするでもなくごろごろしていた。 とてつもなく無意味で、それでいて楽しい時間だと感じた。 やがて砂時計の砂が残り少なくなり、私は少女に言った。 「……また会えるかな?」 少女は、ふっと笑うと何かを言おうとした。そのとき砂が全て落ちてしまい、少女は跡形もなく消えてしまった。 しかし心に余裕の生まれた私には分かっていた。何故少女の持っていたのは砂時計なのか。 会いたければひっくり返せばいい、そうすればまた無意味な時間が流れ始めるのだと……
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