1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
アデンは泣いていました。
ずっと一緒にいた緑の妖精が忽然と消えてしまったのです。
アデンはこの星中を探し回りましたが、その姿はありません。
そして魂も探ったのですが、緑の妖精グラスの魂もなかったのです。
アデンは途方にくれて、緑濃い芝生に寝転びました。
アデンはこの星の創造神で、生まれてすぐに星を創り、たまたま出会った緑の妖精グラスを雇って家来にしたのです。
ふたりは楽しみながら緑のオーラを流して、この星の活性化を行いました。
星中が緑と青だけになりました。
アデンもグラスも顔を見合わせて喜んだのです。
楽しい日々を過ごしていたのですが、ある朝、グラスがいないことをアデンは気づき、探し回ったのです。
「グラス、さびしいようー…」とアデンは言って、涙を流しました。
緑は深く、水も澄んでいます。
このまま数百万年放置しておけば、まずは昆虫が生まれ、動物も生まれることでしょう。
ですがアデンにとって、グラスはかけがえのない友達でもあるのです。
アデンは泣きながら眠るのですが、翌朝起きるとすぐにグラスを探す旅に出ます。
アデンは空を飛べるので、簡単に星中を回れます。
そんなある日、アデンは魂の存在を確認しました。
それはグラスの魂だったのです。
「グラスッ!!」とアデンは叫んで、その魂の場所に急行しました。
その場所は、アデンとグラスが造ったふたりの家でした。
「えー… ここに…」とアデンは言って、グラスを探しました。
「ええええええっ?!」とアデンは大きな叫び声を上げたのです。
「あはは、ゴメンね、ご主人様っ!!」とグラスは言いました。
グラスは大地に根を生やしたごく普通の草になっていたのです。
「あ、生まれるからね」とグラスが言うと、草が左右に分かれて地面から緑色の体のグラスが出てきました。
「…ああ、よかったよおー…」と言ってアデンは泣きました。
「きちんと言っておくべきだったよね。
僕たち緑の妖精は、大地のエネルギーを食べる必要があるだ。
その間だけ、ボクは死んじゃったようになっちゃうんだよ。
でも、この星は肥えてるから、
生まれ代わりをする必要はもうないって思うんだ」
アデンはグラスの話しを聞きながら、何度も何度もうなづいています。
ふたりはずっと仲良く、星が壊れてしまうまでの100億年間、幸せに暮らしました。
―― おわり ――
最初のコメントを投稿しよう!