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思い起こせば、あの人と出会ったのはもう随分昔のことだ。
お金も食べ物も乏しくとも、それでも当時の自分には、いくつかの選択肢があった。 私は、あの人を待つことを選択した。
必ずしも報われるとは思っていなかった。
しかし、あの人を忘れない自由と権利が、少なくとも西に住む自分にはある。
その想いに殉じる覚悟があれば、たとえ報われなくても、誰も怨まずに済むだろう。
あの時は確かにそう思えた。
確かに。
今思えばあの瞬間から、恐らく自分は、余生のような人生を歩み始めたのだ。
しかしそれでも、やまぬ想いはいつの間にか澱のように溜まり、……
……そして知らぬ間に、腐敗していた。
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