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月が煌煌と輝いている。
大陸の中心、大都のそのまた中心にある王城のそのまた中にある皇帝の後宮。
対となる館の東宮と西宮、そのどちらからも離れたところにあるこの桃園が、私達の逢瀬の場所だ。
「黎妃、寒いだろう。もっとこっちへ」
「はい、大哥」
スラリと長い腕に引き寄せられて、私は彼の胸の中へと滑り込む。
目の前には、白い月明かりに照らされた桃園が、幻想的に浮かび上がる。
真昼には、厳めしい番兵が睨みを利かせている皇帝のための桃園も、今は私達二人のもの。
雨のない夜、私達はいつでも
果樹園のほとりの大樹の下で、一時の逢瀬を愉しんだ。
「綺麗だな」
「ええ、本当に」
月を見上げた私に、彼は可笑しそうに微笑んだ
「黎妃のことだ」
「…にいさまったら……ん」
私の瞳を見つめ、彼はふっと口の端で笑む。
私の視界にあったお月様が遮られ、すぐに、優しい口づけが落ちてきた。
私は、蒼大哥に拾われてここへきた _____
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