Blood Call

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 時刻は23時35分。勤務先の丸刃病院は目の前だ。勤務は24時からなので急ぐ必要はないのだが、左手にぶら下げたコンビニの袋がカサカサと鳴ると、つい歩調が速まった。  いつもなら、真っ暗な夜道は慣れていても少し怖い。黒いアスファルトをLEDの街灯が丸く照らしているけれど、やけに青白い人工的な灯りはどこかよそよそしくて頼りにならない気がする。意識しないようにしていても、足の裏がむずむずして回れ右して帰りたくなる。  しかし今日ばかりはスニーカーを履いた足がクルクルとせわしなく前後を入れ替えて、私を病院に運んでくれる。ビニール袋の中の数量限定のチーズタルトを食いしん坊の丸田さんと秋月さんに早く見せたくて、自然と足取りも軽くなってしまうからだ。  看護師の仕事はチームプレーだ。勤務が誰と一緒かということは、その日の気分を大きく左右する。それは運次第、勤務表を作成する師長の指先次第のおみくじのようなものだから、仲良しの丸田さんと秋月さんと一緒の今日の深夜勤は、大当たり。仕事ではあるけれど、いや仕事だからこそ、仲良し三人組が一緒の勤務はご褒美のようなものなのだ。
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