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ルーム・ノヴァスの伝説 (その 3)
タブレットの解読の3日目
私オリガ・スベトラーナはタブレットの解読を進めている。
「古代人は、その必要とするエネルギーを当初、地中から火の水や、火の石に
よって得ようとしましたが、やがて、動物と植物の脂肪や炭水化物から得られ
ることを知りました。
これは画期的な革命でした。
その技術を持った都市は繁栄し、人々が集まったのです。
一方で相変わらず、荒れ地をさまよう人々もいました。
彼らは、エネルギーを求めて、都市を襲撃するようになり、また都市間でもその勢力圏を巡って争いが起こるようになりました。
戦争が始まったのです。
そこで、生徒諸君に問います。
あなたは、敵が攻めてきた際には戦いますか?
それとも、平和を選びますか?」
この質問を見て、私は、この書は歴史の書でもあるのだが、教科書でもあるのだ。その為にこのような質問が設定されているのだろう、と思った。
戦争と平和であれば、平和を選んだ。
すると、また書籍は次のコードを示し、ウマルの講義が続いた。
このような質問が何度か繰り返され、私は大抵の場合「平和」を選ぶのだが、そうするとやがて、都市は追い詰められていくことに気づいた。
「平和」の為に条約を締結するのだが、何らかの条件があり、時にはこちらが不利な場合がある。
特にこちらから平和を望んだ場合は、決まって敵方に賠償金や毎年の貢納金を支払う事になるのだ。
それは、都市が繁栄している間は良いのだがそう長くは続かない。
結局、支払いが困難になり戦争せざるを得なくなる。
その様な時に、また例の「戦争か、平和か」の質問が来るのだ。
酷いときには、「反乱か服従か」を選択する場合もある。
ここでは、平和とは、結局服従なのだ。
反対に戦争を選んだ場合は、相手を征服し、領地も拡大し、支配する人口も増える。都市の繁栄が続くのである。
そのような歴史を繰り返すのだが、実際にその歴史を選択しているのは、読者である私なのだ。
このことに気づいたとき、私は、この書は真実の歴史を伝えているのか?
疑問に思った。まるで、ゲームのようにも思えるのだ。
ただ、ゲームやクイズと違うのは、どの選択においても、私の決定したとおりに歴史が進むということである。
決してゲームオーバーにはならないのだ。
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