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ルーム・ノヴァスの伝説 (その 5)
タブレットの解読の5日目
帝国メサスと戦うべきか。私は迷っていた。
この事態をアラン教授に報告すべきだろうか?
アラン教授は明後日には、進捗状況の確認に来るはずである。
もし、その時にこのような事態のために解読が思うように進んでいないと知ったら、彼はどうするだろうか?
私の知るアラン教授は、慇懃無礼で、冷酷で、時に高圧的な人物である。
このタブレットが、唯の記録ではないと知ったらどうだろう。
彼の予定では2週間後には解読を終わらせなければならない。
そうしないと、CTU(中国トルキスタン連合)にこの記録を持って行かれるからだ。
彼は、ヒステリックに騒ぐだろうか?
それだけではない、彼はきっと私の想像する最悪の決断を下すだろう。
それは、このタブレットのデータを解読せずにシミュレーターに統合してしまうことだ。
私が恐れているのは、このタブレットは、どこか外部の世界とリンクしているのではないかと言うことだ。
そうでなければ、出される質問の解答によって、その後の未来が変わってしまう、などということがあるだろうか。
このタブレットのデータ容量はせいぜい1TBだろう。それにしては、物語が多すぎる。
もし、外部とリンクしていた場合、シミュレーターの中に外部からのデータが呼び出されるのではないか?
その時、どのようなことが起きるのか?
それを、私は恐れている。
私は、結局メサスと戦うことを選んだ。
服従を選んだとしても今までの経験から、いずれ戦うことになるのだろう、と思ったからだ。
すると、歴史は不思議な奇跡を起こした。
突如、北方から新しい敵が現れたのだ。
遊牧民の国家である。
荒れ野で遊牧を選んだ人々が、ここに来て、ついに強力な国家を形成したのである。
彼らは、メサスの国境を襲い、挑発した。
メサスはその北方の敵と戦うために戦力を集中させねばならなくなった。
北方の敵はオグズと言い、馬と弓矢と鉄を使った機動的な攻撃方法で、メサスを翻弄する。
東に現れたかと思えばすぐ引き、また西に現れるといった具合である。
その為、メサスはジームラ・ウントに対して無条件和平を申し出てきたのである。
こうして、メサスの脅威は去ったのだ。
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