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「……ん?」
目が、開いた。
……え。私、寝てたの。
ここどこ……部屋じゃない。
部屋じゃ、なくて。
「……っ!?」
「おー。起きたか」
「っ先生っ?!私なんでっ」
「……お前、よく寝たみたいだな……」
通常運転に戻ったか、って言ってるみたいに聞こえたけど、なに、通常運転って。
「……ああっ!エプロン!エプロン取りに来ておにぎり食べて眠くなって、…………っ!!」
思い出せない……っていうか、思い出せるけど、思い出したらいけない気がするっ……!!
「目ぇ覚めたなら、帰るかー」
「ひっ!!」
先生がソファの近くまで来て、びくっとなった。
……うん、思い出さないよ?!思い出さないけど、顔が熱っ……!
「何騒いでんだよ。ほら、立て」
手を差し出される。掴むかどうかちょっとためらう。
「あん?眠たいちーちゃんは、抱っこで玄関まで連れてって欲しいのか?」
「……っばかっっ!!!!」
にやにや言われて、むっとした。握力検査みたいに、ぎゅーっ!!と目一杯手を握る。悔しいことに全然効いてなかったみたいで、ほいっと簡単に立ち上がらされた。
「お靴、履けまちゅかー?履かせてやろうか?」
「ばかばかばかぁっ!セクハラですっ!!」
げらげら笑いながら、雪駄を履いてる……ほんとに腹立つっ!!
ぷんぷんしながら早足で歩くけど、普通に歩いて付いて来る……ほんっっと、腹立つなあっ!
「先生!送ってくれるお礼です、ご飯食べて帰りましょ!」
「また食うのかよ……」
すごく嫌そう。ご飯でこんなにげんなりする人って珍しいよ。知ってて言ったんだけど。
「さっきのは、昼ご飯!今度は、夜ご飯です!」
私達がこうやって並んで歩いてるのも、ふざけてるのも、一緒にご飯をたべるのも、ものすごい偶然の結果かもしれない、けど。
「そうだ!ロシア料理とかどうですか?」
「また妙なもん食わされんのかよ……」
もしも私達がいつかここから居なくなってしまうとしても、今は。
「妙じゃないです、美味しいですよ!!あ、こっちです、こっち!」
私は先生の手を取って、青に変わった横断歩道を駅に向かって渡り始めた。
【おわり】
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