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第三楽章 -吾禍侘歌-
落
涙が溢れた
恰も私が人魚姫であるかのように
嗚呼,永遠回帰
海魔女は落ちた 永久の失墜
なら誘い人は何方?
「運命愛?
然諾します」
『其許か』
「他に如何なる選択肢が?」
『数多在るだろう』
「在りはしません」
『真にか?』
「私は祗 唄うだけ」
勇みは墜ちた 虚無の到来
娘が奏づは 何の調べ
さぁ 涙をお拭き
然れば屹度解るだろう
何を畏れる事が在る?
『唄うが佳い
然れど其で何が変わる?』
「何も変わりません」
『解って 尚
何故 唄う?』
「唄う事しか出来ない故」
『真にか?』
哀しき娘の涅色の瞳
揺れる揺らぐは漣の様
さて措き 人魚は佳人
佳人薄命 泡沫の命
『うたがた 御前は
佳人ではない』
「然れば私は何人ですか」
『痴れ人だ』
「然諾します」
存在しない踵を廻らし
黒き影は消えていく
取り残された 選り屑娘
涙映るは 艶鱗
漣映るは 泡沫人
解って 尚
娘は祗 唄うだけ
冀わくは娘に巡神の加護を
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