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 ジージージー、と夏を代表するアイツが鳴いている。  よく見ると、自分の足元にはアイツ()のお仲間が一匹、静かに転がっていた。  夏虫の命はどうしてこうも儚いのか。その儚さはまるで私の恋のようだ。  沈黙し続ける死体に向けて共感を送ってみても答えなんか返ってくる筈もない。  ソイツのお仲間達といえばソイツの死なんか欠片も意に介さず、ただ只管(ひたすら)に街路樹にしがみついてジージージージーと喚き散らしている。    鮮烈な(とき)を駆け抜けるように必死に生きるその声を聴きながら、私は若干放心気味に、多分もう一時間程も前からここに座っていた。  36度の炎天下。駅ビルから時折涼しい空気が流れ届くが、背中や頬を汗が伝う感覚だけを緩慢に感じ取る。  暑いような気もするけど、なんだかどうでもいい。    そんな時だった。  
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