16-寂寥

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16-寂寥

サインした離婚届以外に何も入っていない。 離婚は結婚時より何倍も疲れると聞くが、俺達の17年は、こんなにも呆気ないのか。 口に出しても、何も書いてない離婚届を実際に目の前にしても、現実味が無かったものが、見覚えのある咲子の字に、一気にいやジワジワと足元から冷たい水が込み上げて溺れていくような息苦しさを覚える。 俺は、結局こうなってみないと分からないのだ。 一番大事なものが何なのか、家族が俺の全てで、無くしたら俺には何も無い事が、わかっているようで、わかっていない。 結婚したら、死ぬまで一緒。 別に改めて考えた事もないが、当たり前にその日を迎えるものだと疑う事も無かった。 そんな当たり前なんて無い事さえも気付かなかった。 ニュースに流れる、3組に1組とも言われている離婚率や有名人の離婚、身近にも勇仁や後輩でも離婚している奴は居るのに。
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