16-寂寥

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俺は土曜日を待たず、金曜日の仕事帰りそのままの足で、自宅へ向かった。 電話には出てくれないので仕方がなく、メールで連絡は入れているが返信は無い。 こんな風に、咲子の事を、家族の事ばかりを考えて過ごした数日は、いつの日以来だろうか…。 当たり前の存在過ぎて、仕事に、酒に、家族の事がいつの間にか疎かになっていたが、それも咲子が居てくれたからできたこそなのだ。 隣の課長から飲みに誘われて行くと、仕事疲れで早めに帰ると、嫁から子供や奥様同士の付き合いの不満に付き合わされ、真っ直ぐ帰るのが嫌だと聞かされたことや、他の同僚や取引先の人達が漏らす、嫁への愚痴や不満を思い出していた。 勿論、遅くなれば誰と飲んだの?と聞いてきて煩く思う時がゼロだったという訳では無いが、咲子は早く帰ったとしても、平日に愚痴を言って俺を困らせる事など無く、寧ろ仕事の愚痴を聞いてくれる、そんな存在で皆のような不満等は全く無かった。 咲子は、他の妻達が日頃から旦那に発散してたものを貯め過ぎて、ここに来て爆発してしまったのだろうか…と嫌な予感が頭をよぎる。
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