16-寂寥

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名古屋駅で固定電話の方に電話を入れると、沙穂が出た。 「お母さん?お婆ちゃんの所に行ってくるって。 何で家電?携帯に電話したら?」 返信は無くとも既読はされている。 それに週末帰るとは水曜日には、送ってあった筈だ。 このタイミングで…まさか、義母に相談しに行っているのだろうか…。 咲子が携帯に出ないので、義母の家に電話を入れてみる。 「はい。高梨です」 「義母(おかあ)さん、ご無沙汰しております。茂樹です。 週末帰ると伝えていたんですが、今日帰ってこれたので。 沙穂から咲子さんは、そちらに居ると聞いて、今かわってもらえますか?」 「あ〜そうだったの。帰って来るとは聞いてなかったから、今呼んでくるわ」 義母の声の調子だと、まだ何も聞いてはなさそうで、携帯を握り締めていた汗ばんだ右手をハンカチで拭きながら安堵のため息をつく。 「ごめんなさい」 暫く待った後、聞こえて来たのは、咲子ではなく困った様子の義母の声だった。 「何故か頑なに出ないと言い張っていて、私がよく聞いとくから、今日は泊まらせるわね。ごめんなさいね。せっかく帰って来たのに…」
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