16-寂寥

12/28
1950人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
疲れて家に帰り、何につけ同じ質問が続けば、逃げ出したくなるだろう。 家族で過ごせる時間の有り難みもこの瞬間は忘れ、明日東京へ戻れることに安堵すら覚える。 嫌な事から逃げているだけだが、一つの問いに対して答えは一つ。 これほどやり取りの無駄なものは無い…本当に最後の質問になる事を願いながら眠りについた。 帰るまでの時間は穏やかだった。  あの一件さえバレなければ…と嫌でも思う。 沙穂も将輝も、憎らしい事を言っても何だかんだで俺のことも好きで居てくれる。 沙穂は咲子を選ぶだろうが、将輝は男だし1人になる不憫な俺を選ぶかもしれない…それでも良いのだろうか。 小さい頃身体が弱かった将輝への愛情の注ぎ方は、相当なものだった。今でも可愛くて仕方がないという顔をしているのに。 2人とも咲子かもしれないがな…と自分の突っ込みに落ち込みながら、離婚を受け入れて行くのには時間がかかりそうで、男が守りたい女だと思う咲子より、よっぽど女々しい自分に笑ってしまった。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!