16-寂寥

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そもそも、萌ちゃんとは不倫と呼べる関係ではなく、金銭が絡むセックスなど風俗に遊びに行っているのと同じ様なものだ。 一番金を使った相手に会うのに後ろめたさが全く無い訳ではなく、そんな言い訳じみたことを考えながらも、マンションへ帰る足どりより明らかに軽い。 萌ちゃんは、顔色も優れないと、体調崩してたのかと心配しながら、久しぶりの来店を喜んでくれた。 咲子に拒絶された自分の存在に価値を与えてくれる笑顔に癒される。 嫌な事を一時忘れるため、そして久し振りの楽しい酒に杯も進む俺に、萌ちゃんが耳元で囁いた。 「そんなに飲んだら寝ちゃうよ。 夜はこれからでしょう?」 そう言って手を握る彼女の誘いを断るべきか、最後に一回… 離婚騒動ですっかり影を潜めていた欲がまたうごめき葛藤しながらも、アフターをやめ、残された金と小遣いでこれからも店に通う方を選んだ。
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