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4-豁然
彼女が部屋に上がるかもしれないと、乱雑な部屋を思い浮かべ、ソファーに無造作に置いた服やゴミ、片付けてないことを後悔していた自分に苦笑いしながら、ドアノブに手をかける。
寂然とした部屋に入ると、思い出していた通りの光景が広がっていた。
左腕に残る彼女の温もりと、鼻腔に残る微かな香水の香り…さっきの時間が本物の証しである筈なのに、飲み過ぎて夢でも見ていたかのようだ…。
ベランダの外へ顔を出し通りを眺めると、彼女が立っていて、大きな弧を描いて両手を振っている。
最後、部屋にちゃんと入るまで心配だから、顔を出すように言われていたのだ。
やっぱり、夢では無かったんだな…独り言を呟きながら、彼女が少し先の角を曲がるまで後ろ姿を見送った…。
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