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7ブルターニュの海岸
打ち寄せる波―。
エグバートとプルートの夫婦が歩いている。
まだ20歳前後の若い夫婦である。
その前に、白い長衣を着たみかりんが立っている。
プルート「あら、アザラシさん。お出迎え?」
みかりん「(黙ってかぶりを振り)ブリタニアで大変なことが起きたの」
プルート「大変なことって?」
みかりん「7月29日、マーシアのオファ王が、レッドウルフ王の率いるケント軍との戦いで死んだの」
プルート、驚いて、エグバートを見る。
エグバート、表情を変えない。
みかりん「エグバート王子。ブリタニアへ帰るときが来たようね」
エグバート、こたえず、海を見る。
海の向こうにはブリタニアがある。
8アーヘンの宮殿・広間
円卓をかこんでいたカール大帝と魔法女子たちが立ち上がる。
何かの会議が終わったイメージ。
カール「(こーちゃんを呼び止めて)コズエ、ちょっと話がある」
こーちゃん「(なんだろう?という顔)」
9同・王の間
壁にフランク王国を中心とする当時のヨーロッパの地図。
N「フランク王国の国王カールは、現在のフランス・イタリア・ドイツそれにスペインの一部を支配し、ローマ教皇の庇護者として、事実上の西ローマ帝国の皇帝『大帝』と呼ばれていた」
カールが立っている。
その背後にこーちゃん。
カール「オファ王が討たれた後、後を継いだコエンウルフはマーシアを治めきれず、彼の国は大混乱だそうだ」
こーちゃん「さもありましょう。オファ王の指導力あってこそのマーシアでしたから」
カール「この機を逃がさず、エグバートにはブリタニアへ帰還してもらう」
こーちゃん「エグバート王子にブリタニアを治めよ、と?」
カール「そうだ。永く我がフランク王国に亡命者としてとどまってもらっていたが、まずは祖国へ戻り、ウェセックス王国の国王に即位してもらい、その後、ブリタニア全土の・・・・なんといったかな、彼の地の皇帝の称号は?」
こーちゃん「ブレトワルダでございましょう」
カール「そうであった。そのブレトワルダになってもらう」
こーちゃん「失礼ながら、今更、 ブリタニアへ帰ることを王子が望まれるでしょうか?そもそもこのフランク王国へ亡命してきたのも、元はといえば、大帝とオファ王との取り引きによるもの。王子にしてみれば、石持って追われた祖国には屈折した思いがあるのでは」
カール「ブリタニアはヨーロッパの防波堤だ。来るべきデーン人(ノルマン人)の襲来に備えさせなければならん。そのために、わしは娘のプルートをアレにくれてやったのだ」
N「カールは、このとき、百年後に起こるノルマン人の大移動を予見していたのかもしれなかった」
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