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14アーヘンの王宮・王の間
立ったまま話しているカールとこーちゃん。
こーちゃん「幼き日に、大帝とオファ王との取り引きで追われたブリタニアに対して屈折した心情をお持ちなのでは?」
カール「それもあろうが、一種の燃え尽き症候群であろう」
こーちゃん「燃え尽き症候群?」
カール「わしも経験があるが、英雄という者は、ひとつ大業を成し遂げると、そこで一丁上がりの気持ちになる。わしの場合、ランゴバルト(イタリア半島北部にあった王国)を攻略・併合したときがそうだった」
こーちゃん「(聞いている)」
カール「アレもプルートとの結婚をわしに認めさせるために、ベネチアからハンガリー平原のタタ湖、さらにはトランスシルバニアからキプチャック平原(ウクライナ)まで遠征し、相応の武勲を立てて、めでたくわが娘婿となり、ブルターニュ辺境伯にまでなった。そこまでが自分の器量と考えているのであろう」
こーちゃん「エグバート王子は自らを知るに足るお方です」
カール「前にプルートも交えて晩餐を共にしたとき、先の東方遠征の功績の大半は、魔法女子の働きによるものだと申しておった。たしかにそういう面もあろうが、わしはブリタニア一国程度は任せてもよいと考えている」
こーちゃん「(聞いている)」
カール「アレの器の大きさがどうであろうと、今は、ブリタニアのアングロ=サクソン系の諸王国のなかで、もっとも格式の高いウェセックス王国の血統に連なる者としてなんとしてでもブリタニアの総君主・・・・ブレトワルダか、それに成ってもらわねばならん」
こーちゃん「おそれながら、ブリタニアをただひとりの人格が支配するためには、ブレトワルダの称号だけでは、彼の地に住む諸侯・市民はひれ伏さないと思われますが」
カール「何が必要だ?金か?それともパンか?これらであれば、アレが採掘して送ってきたトランスシルバニアの金を持って、パヴィアとマインツでソリデュウス金貨を大量に鋳造させておる。また、タラント港にも入った東ローマ帝国からの商船からも小麦を言い値で大量買い付けさせておる。これらは、わしの娘婿の肩書きとともに、アレのブリタニア帰還のときの土産として持たせてやるつもりだ」
こーちゃん「モノではなく、アーサー王の名跡を継げるかどうかです」
カール「アーサー?」
こーちゃん「彼の国の伝説上の王です。300年ほど昔、ローマ軍が撤退した後、サクソン人のブリタニア侵入に抵抗して、これを撃退したケルト人の指導者といわれております」
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