はるかの空に月明かりがあるという

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はるかの空に月明かりがあるという

長く長く、ひたすら長くその星は生きていました。ちかりちかりと星たちが瞬き、落ちて、消えていく。そんな光景をずっとずっと眺めておりました。 「また物思いかい?」 時々、その星の横を通る彗星は、その年寄りにそう声をかけて挨拶をします。 「考える時間があるだけマシさ」 年寄りの星はそう呟いては笑うのです。宇宙を飛び回る彗星は、ふふと笑って飛んでいくのです。年寄りの数少ない友人ですから、ちょっとした言葉のやり取りも嬉しくなるのです。 年寄りの星の友人は彗星ばかり。その彗星たちは宇宙中の物語を教えてくれます。 年寄りの星がその中でも一番興味があるのは人間の話です。宇宙中を見ても、星の上に生命が宿るのはとても珍しくて年寄りの星は彗星たちが横を通る瞬間に話してくれる人間の話がとても好きでした。
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