明治恋物語

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 手で拭っても、汗が大量に出る。背中が汗と雨で濡れ、一周回って涼しさを知る。  左右、前後、すれ違う人々を見る。  けれど先生と思える人は現れない。  何時もなら、『ただいま』からの『お帰り』で会える。  いくら何でも遅いのは分かっていた。だからこそ、やはり先生は居ないって思いたくなかった。  ゆったりとした足取りで帰る。  通った道を戻ると存在しなかった、水たまりが何個も出来ていた。  裸足で出てきた訳じゃないのに足は泥だらけだ。  先生、雨の日は誰でも泥で汚れてしまうね。忘れていたよ、ごめんね。  想いながら傘を閉じて玄関に入る。泥だらけの足を拭いた。  そのまま部屋に戻ろうとした。
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