明治恋物語

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 誰も居ない家で、有作が1人。  布団の上に座ると両足を曲げた。  マッチ箱からマッチ棒を1本だけ取り出し、側面のやすりに擦り付ける。  ボッとマッチ棒に火が付くと紙巻き煙草に当てた。火が移るとマッチ棒の方は上下に揺らして火を消す。  使い終わったら、灰皿に入れた。  すぅーと煙草を吸い、ふぅーと息を吐く。  何度も煙草の味を楽しむけれど腹は素直だった。 「腹減った。カツレツ~!」  ああー! と目を閉じて声を上げる。  必死に煙草で空腹を満たすつもりで我慢をしてみた。  残念ながら腹の虫が鳴る。煙草の空気じゃ限界みたいだ。  口走った“ カツレツ ”という食べ物も先生から教わった、異国の言葉だ。
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