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「ねぇ、君。もしかして・・・・・・」
一旦、口を開けると喋り続けるかと思えば口を閉じる。
(なんだ? もしかしてって)
「泳げないのかい? ならーーー」
言って欲しくなかった言葉。
決して、泳げない事は知られたくなかった。 予想外の質問が飛び込んだせいで、最後まで言おうとする男に邪魔を入れる。
条件反射のようにこう言い返す。
「そんなんじゃねぇから、ほっとけ!」
つい、声を荒らげた。
こんな事で怒る人間ではないのに、ずっと居続ける男に苛立ちを隠せなかった。
(きっと、この蒸し暑いせいだ)
周りや場の空気が悪くしてしまったと思っても、もう遅い。
男の顔をまとも見ずにその場から離れる選択をした。背を向けて、サンダルに足を入れる。立ち上がると逃げるようにパラソルから出ていく。
後ろで聞こえる男の「待って!」という言葉を無視する。
大智は足を止めない。
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