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乙女のたゆたう夜は月色
「アキラったら、こんなところにいたのね」
「ああ、ごめんよミツキ」
聞き慣れたアルトの声に、大きな窓に面したカウンターテーブルに身体を預け、船からの眺めを楽しんでいたアキラが振り向く。
少し呆れたような顔をした、アイボリーのロングスカート姿のミツキが、腕組みをしながらアキラに近づいて言った。
「なにも言わないで、知らない間にいなくなってるんだもの。探したわよ」
「だから、ごめんよ、って。でも仕方ないよ、これに誘われたらさ」
「どれ?」
「あれ」
そう言ってアキラは上を指す。
天井を見たから何だというのか、と一瞬だけ思ったが、すぐに思い直した。
天窓のようになっているのには気がついていなかった。
アキラの指差す方向を見たミツキは、少しの間だけ言葉を失った。
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